先日読んだ本の中に「選択肢が増えすぎるとストレスが増し、幸福度が下がることがある」
という記述をみつけました。
マーカス・バッキンガム
三笠書房
売り上げランキング: 284,546
ここでは「生き方のバリエーション」が以前に比べて格段に広がったことで
女性はより多くの選択ができるようになったけれど、
このことでメリットが多い反面ストレスを生み出してもいる、
といった内容が書かれていました。
多くの選択肢から選べる、というのは楽しく自由度が高くいいことばかり、
のような気がしますがそれは自分自身が確固たるものさしを持っていれば、の話。
そもそもの選び方がわからなければ、何をどんな基準で選び取ればいいのかわからず、
結局は「みんながやっているから」「評判がいいから」などという
他人基準で決断をしてしまうことにもなりかねません。
みんながいいというものを自分も好きかどうかなんて、本当はわからないのに。
選択肢過多(Choice Overload)とは?
さて、マーケティング用語に「
選択肢過多(Choice Overload)」というものがあります。
製品の種類を豊富に揃えることは、顧客の買い物の選択肢を広げ、選ぶ楽しみや買い物の自由を提供することにつながる重要な施策である
しかし、選択肢を増やし過ぎて、選択肢過多となってしまうと、結果として顧客の購買行動の負担となり、売上に結びつかない場合もある。
「選ぶ楽しみ」があるほうがいいけれど、度を過ぎると選択肢自体が負担になってしまう、と。
選択肢過多によって、購買意欲が低下してしまう理由については、いくつかの要因が考えられる。
1つ目は、大多数の人は全ての可能性を比較検討するだけの能力を持ち合わせていないということである。人間の短期記憶に関する「7±2の原則」という、新規に与えられた情報を5つから9つしか頭の中に留めておくことができないとされる原則がある。
これは人による、というかジャンルによって得手不得手が出てくるのでしょうが、
料理がものすごく好きで得意な人であれば、品数豊富なスーパーで楽しみながら
自分好みの醤油ひとつを正しく選択できるのでしょうが、
そうでない人なら莫大な数の醤油を前にどれを買っていいのかわからなくて
途方にくれてしまうかもしれません。
私もラップトップを新調する際にスペック比較するのは苦手です。
別に機械音痴、というわけではないのですが、何しろ選択肢が多すぎてしんどいのです。
2つ目は、選択肢過多によって評価の形成が難しくなり、参照に足るだけの基準ができないということである。(中略)選択肢過多で比較対象の数が多ければ多いほど、評価基準が曖昧になりやすく、品質評価の自信が揺らいでしまい、結果として購買を見送るという判断が為されていると考えられる。
これは凄くよくわかる!自分がさほど詳しくないジャンルのものを購入する時、
今はネットの口コミや比較サイトを利用することが多いですよね。
家電とか、コスメなんかは特に口コミが山のように見つかるので
自分の知らなかった情報を集めて知識を増やすのも最初のうちは楽しいんです。
が、あれこれと迷ううちに結局面倒になって、そのうち情報収集自体が
なんだか無駄な時間だったような気になってしまうことがよくあります。
で、結局買うことすら面倒になったり。
3つ目は、切り捨てなけらばならない他の選択肢が多いと心理的負担も大きくなるということである。沢山の選択肢の中からひとつを選ばなければならない場合、購買後に他の製品の方が良かったかも知れないと後悔したり、他人やクチコミの評価などで他の製品の方が高評価であったりした場合に後悔する可能性が高くなる。
結局こうなるのがイヤなので疲れるまで調べてしまうのです。
でも100個の中から選ぶより、2つのうちいずれかを選ぶ、というほうが圧倒的に
心理的時間的負担が少ないことは事実。
それを「自由度が少ない」と見るか「合理的である」と見るかは状況によりますが。
例えば経済的理由により選択基準が「とにかく安いもの」であるという人は
自由度は低く選ぶ楽しみを得られないかもしれませんが、選択基準が明確なため、
選択するストレスからはものすごく自由である、とも言えます。
日常生活における選択肢過多
選択肢過多(Choice Overload)はマーケティング用語なので
上記の解説文はいかに買わせるか?という視点で書かれていますが、
選択肢過多のデメリットについては買い物以外の場面にも当てはまります。
例えば、女性の半数以上が1年に1度は言うであろうこれらの台詞
「服はいっぱいあるのに、何着ていいかわからない」
「急に寒く(暑く)なったから、何着ていいかわからない」
「この歳になると、何着て(略」
これは選択肢が多いけど、選びきれていない。
または自分の「選択能力」に対して所有物の割合が多すぎる、ということ。
たくさん持っているのにどれを選べばよいかわからなくてストレスになる、なんて
なんとも贅沢な話ですが、これが洋服選びなど毎日のことになると事態は結構深刻です。
断捨離の効果として心が軽くなった、というものがあるようですが、
選択肢を減らすことで「選ぶストレス」を軽減できるからかもしれません。
そうそう、「服を選ぶことを考える時間が無駄だから」という理由で同じ服しか着ない、
という著名人は大勢居ますよね。
>>参考
同じ服しか着ないミニマリストの有名人たち(もたないブログ)
Facebook CEOおなじTシャツ20枚を着まわし(CNN)
個人的にはせっかく同じシャツを着るなら100枚は持ちすぎだろ、
と思いますがまあそれはおいといて。
しかしこういうスタイルを持っているのは大体男性、
しかもファッションにこだわりのなさそうな(ごめん)人ばかりですよね。
女性が毎日同じ服を着ることは可能??
NY在住の女性が365日黒ドレスだけで過ごす様子を綴ったブログが以前話題になりました。
シーナ・マテイケン
メディアファクトリー
売り上げランキング: 329,021
が、彼女の場合は実験的要素というかそうする「目的」があったので
上記の男性陣とはまたちょっと違うかな。
>>参考
同じ黒ドレスを365日間着回し学校建てたシーナのスタイルブックが日本語に
(live door ニュース)
ううむ、おしゃれな日本人女性で定番スタイル派の人はいないのか…と、
考えてみたら、いました。
田中 宥久子さん。
「造顔マッサージ」で一世を風靡し2012年に67歳で亡くなった彼女。
公の場ではいつも黒のパンツスーツに黒の
ボルサリーノ 、黒ふち眼鏡という
彼女の定番スタイルを持っていましたよね。
しかも、とてもお似合いで素敵でした。
女性の場合、20代30代では田中さんのような定番マイスタイルで通すのは
少々難しいかもしれません。流行ものに乗っかったりもしたい年頃だし。
が、若いうちにあれこれ失敗や散財をしながら勉強する期間を経た
40代、50代、60代ならアリなんじゃないか、と思うのです。
私はまだまだ煩悩にまみれているので手放せないものも多く
ミニマリストとして達観できていないですが、
いつかそんな風に定番スタイルを構築してみたいなあという憧れは持っています。
モノを減らすということは結局自分の所有能力と対峙する行為なのかも知れません。
持っているモノが多すぎて正しい選択ができなくなってしまったらそれはもうキャパオーバー。
自分のスケールを悟ってそれを受け入れ、潔く減らすことを心がけたいです。
田中 宥久子
WAVE出版
売り上げランキング: 429,841